氷のなかに_製作余談


Guest Creator(動画・絵) : Ncha-P

作詞・作曲 : 藤村哲弘

自身初の再生数10万回超えを記録し、当楽曲が収録された『V love 25~Aperios~』はオリコン週間22位にランクインするなど、DTM界隈で聞き耳を立ててもらえるきっかけとなった一作。 ここでは楽曲製作に至る話や、製作途中の当時の考え等を余談として残しておきたいと思います。

「どういう音楽をやりたい?」

果てしなく広義で回答することが難しい質問である。 また、明確な目標を定めることができていない人間にはグサッとくる問い掛けだ。

「星のカービィ 夢の泉の物語です。」

某媒体からの質問に対しそんな回答をしたのは、ベースの弾き語りを精力的にやっていた頃の藤村哲弘だった。

意訳すると、 (音数を極力少なくして、音一つ一つにしっかりと役割を持たせ、メロディを引き立てる。 そうすると、音と音の隙間にも感情移入ができて、曇りのない綺麗な感情で聞くことができ、耳に残る曲になる。そんな曲を書いていきたい。)である。

現代のハイエンドな家庭用ゲーム機に触れて育った人達には想像できないかもしれないが、 1990年前後の多くの家庭に置かれていたファミリーコンピュータ(通称ファミコン)というゲーム機は、 一度に同時に3つの音しか出せなかったのである。 3種類の楽器という訳ではなく、例えばピアノを想定した音だけでも「ド」「ミ」「ソ」と同時に発音したら、 その他の楽器は音が出せなくなる。さらには音の種類のバリエーションもかなり限定的。 当然ながらゲームには効果音が有るので、効果音と同時に流れるBGMは2音までとなってしまい、 効果音が2つ同時に鳴る場合は、BGMは1音だけとなってしまう。 限られた条件の下での作曲家さん達の苦労を思うと涙が出る程である。 しかし、そんな限られた条件で作られた曲だからこそ、 人々の思い出と共にず~~~っと鳴り続ける素敵な音楽達がそこには有った。

昔のコンピューターは処理能力が低かった。 でもそれは人間も同じで、同時に何十種類もの情報が流れてきても脳が完全に捌ききれるわけがないのである。 一つの物事に集中するには、極力情報量が少ない方が集中持続力も集中精度も高く、情報として脳にも残りやすい。 ファミコンの曲というのは、世に浸透し始めたテレビゲームに人を順応させる点において、 またゲーム音楽としてもすごく理に適ったものであり、 無駄のない研ぎ澄まされたメロディや音楽だったんだなとつくづく思う。

その中でも、子供の頃の私が最も好きだったのが『星のカービィ 夢の泉の物語』だ。 小中学生がいる家庭では既にファミコンからスーパーファミコンへの移行が行われていた頃に発売されたファミコン末期の名作である。 アクションゲームとして面白かったのはもちろん、桜井カービィが可愛かったのももちろんだが、 なにより【ゲームの曲を聞くためだけに電源を入れる】という行動を初めて起こしたのがこの作品だった。 絵柄に合ったかわいらしい曲調の中に、哀愁漂うメロディ。 聞くと一瞬でその世界観に吸い込まれる感覚。今でも大好きだ。

この頃から歌謡曲以外にもゲーム音楽に興味を持ち、後に手にするスーパーファミコンのゲームでも同様に 【ゲームの曲を聞くためだけに電源を入れる】という行動を起こすようになっていった。 どこかのコメントに有った「イヤイヤPからはスーファミ世代のにおいがする」というのは大正解だ。

最低限の音数で構築される世界に憧れ、それを弾き語りで表現するにはどうすればいいのか。 私の答えは、単音で芯のはっきりした音を出せ、かつ音域を歌と棲み分けできるベースという楽器だったのだ。

少ない音数で世界観を構築したいという考えはDTMを始めてからも変わらなかった。 イヤイヤ星人やどすこい日本といったコミックソングでDTMの初歩を覚えた後、 次は弾き語りでやっていたような落ち着いた感情の曲を表現したい。 そして、憧れのゲーム音楽に少し近づいてみたい。 そんな想いを全部ぶつけながら書いた曲が「氷のなかに」だった。

冒頭のアカペラ部分からその想いが顕著に出ている。 音楽理論を学んでいない私が書く曲なので、それだけで和音となってしまうコードという理念は意識されていない。 構成も歌・ベース・ドラム・ピコ音のみのシンプルなもの。 8bitの音色を好んで使うようになったのは上記の理由で、それを初めて取り入れたのがこの曲だ。 この8bitな音も、ベース同様に単音でもしっかりした芯を持っており、 私のやりたかった音楽に合っていると実感してとても嬉しかった。

PVを担当してくれたのは、自身もニコニコ動画で精力的に活動しているンチャPだった。 本人の活動や学業でとても忙しい中、様々な工夫と多様な発想を用いて多くの時間を割いて製作してくれた。後に本業として映像屋にもなった彼には改めて礼を言いたい。 PVなくしてこの再生数は有り得なかったことだろう。

そして世間はNcha-Pとしての本人の作品、行動、活躍に視線を向けて欲しいと思う。 CD製作も予定しているとのことなので楽しみだ。

そんな努力の甲斐有ってか、「氷のなかに」は色んな媒体で取り上げてもらえたり全国流通のCDにも収録してもらえた。 ・歌謡曲ゲッカヨ 2011年05月号 ・DTM MAGAZINE 2011年6月号 ・V love 25~Aperios~ その他、この曲をきっかけとして色んな声をかけていただけるようになった。 同時期に作家としてプロへのお誘いも有ったりしたが、 デモとして提出するにしてもMIXがプロの世界で戦える知識や技術じゃないと当時から痛感していて、 なによりソングライターよりもシンガーソングライターになりたいとう理由でお断りさせていただいた。

楽曲としての評価はもちろん有り難いが、 中には詞の深いところまでちゃんと読み解いてくれる人もいて、 細部まで注視してもらえることの有り難味を知った。

歌詞の意味は色んなところでも言っているように 『口下手で想いをなかなか言葉に出来ない人の歌』である。 吐き出せないでいると、 その想いを心の中に閉じ込め、浮かんではまた閉じ込め・・・ その繰り返しを何度も行ってしまう。 そんな情景や心境を表している。

この【何度も重ねる繰り返し】を曲の構成とコーラスで表現し、 氷の中のような冷たい雰囲気を高音で表現できるよう試行錯誤を重ねた。

コミュニケーション能力の高い人は一生わからんでよい。 でも私と同じような人間や、根が実は暗いという人には共感していただけるんじゃないかなと思う。

何を血迷ったかこの楽曲を投稿した当時、「イヤイヤPさんて女性ですか?」という内容が含まれたメールが2通届いた。

半年後、夢幻破壊のPV製作を依頼した際、動画師のAOさんに「イヤイヤPさんて女性ですか?」とSkypeで言われた。

さらにその半年後、即売会でバクの心臓を買ってくれた人に「イヤイヤPさんて女性なんじゃないかと思ってました(笑)。」と言われた。

(゚Д゚)?

(゚Д゚)!?

!(?Д!)?

???????(?Д?)???????

・・・男でスマンな。 だが本名晒して活動しているのに全く意味がわからん(赫怒)。

関係無いが、FF11をやっていた頃一人称が「私」だったせいか 「○○さんて実は女だったりします?w」と野良PT中に何度か言われたことが有る。 使用キャラはもちろん男キャラだったのだが、あんたら一体何を期待しとるんだと。

もう一度言うが男性でスマンな。残念ながら中性でもない。でもカービィとぬいぐるみは大好きです。

#製作余談

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